2011年3月25日金曜日

シリコンバレーに学ぶ「遊びの企業文化」

シリコンバレーに学ぶシリーズ第二弾は、企業文化についてです。今回、Google、Apple、Facebook、Twitter、Plug and Play Tech Center、Zapposの6社を訪問させていただきました。(Zapposは、現在、ラスベガスにありますが、企業文化的なくくりから、シリコンバレーに含まさせていただきました。)
 

左上から、Twitter、Google、Apple、Facebook。
Zappos、Plug and Play Tech Centerは次回の投稿で。


共通点は、「遊びの文化」でした。日本の企業からしたら、ふざけてるだろ!と怒られてしまうのではないかと心配なほど、遊びの要素が取り入れられています。

そんな遊びの空間で、一流のエンジニアさんたちが、短い労働時間で、新しいことを考え、新しいビジネスを創り出しているのです。

では、シリコンバレーで働くエンジニアさんたちは、日本で働くエンジニアさんたちと決定的な実力の差があるのでしょうか?

何人かのエンジニアさんにお伺いしましたが、日本のエンジニアさんは、すごい実力を持っているけど、企業の中でそれを生かしきれていないというのが一つの見解のようです。

では、シリコンバレーは何が違うのでしょうか?

私の感じたところによると次の3つが大きく影響しているようです。

(1)クリエイティブな発想を促す環境


楽しそうなGoogleの受付

AppleやGoogleでは、働く場所を「オフィス」と呼ばず、「キャンパス」と呼びます。広大な敷地内には、近代的な建物が点在し、その中を自転車で移動します。


Google キャンパスに置かれた自転車

中には、ビーチバレーコートがあったり、フラミンゴにかじられている(?)恐竜がいたり、ユニークな石像が点在していたり、テーマパークのようになっています。


フラミンゴにかじられている(?)恐竜

ユニークな石像が点々と


また、建物の中には、アーケードゲームのコーナーがあったり、ビリヤードができたり、Google Earthを体感できるマシーンがおいてあります。


Google Earth 体験マシーン
軽快な動きで、宇宙から都市に接近!
そして、都市をの中を自由に旋回!!

いたるところに、おやつや飲み物がおいてあり、すべて無料!訪問者の我々ももらい放題。レッドブルから、伊藤園のお茶、シリアルバーまで、「ほんとにいいんですか!?」ってくらい、もらいほうだいです。さらに、カフェテリアに行けば、これまたすべて無料でなんでも食べられます。

創造的デザイン空間で、至れり尽くせり。これなら、素人の私でも、新しいGoogleのサービスを思いついちゃうかも(なんてことはないですが。。。)というくらい、クリエイティブマインドが刺激されます。

この環境の中で、エンジニアさんたちの実力はクリエイティブに、思う存分発揮されるのではないかと思いました。


(2)仕事に没頭できる仕組み


急成長の Twitter のオフィス

各企業で、エンジニアさんとお話して思ったのが、仕事を心底、楽しんでいるなーということです。Apple社のエンジニアさんは、Appleの製品が大好きで入社したとおっしゃっていました。Twitter社のエンジニアさんに、長時間コンピューターを見て疲れないですか?と伺うと、仕事が楽しいから疲れないとおっしゃっていました。

みなさん、自分の大好きな仕事に没頭されているのです


Twitter の受付の装飾


で、重要なのは、自分の仕事に没頭できる環境があるということなのだと思いました。エンジニアリングについて全くの素人の私ですが、どうやら、次の2点が大きくかかわっているようです。
 
・サポート体制がしっかりしている
PCの調子が悪くなったら、すぐにサポートチームが来てくれて、代わりのPCを用意してくれるそうです。
・マインドの違い
アメリカでは、新製品の多少の不具合は無視して、新しい機能の開発を優先するそうです。また、Googleでは、専門的にバグつぶしのチームがあり、そのおかげで、開発サイドのスピードを滞らせずにすんでいるともおうかがいしました。

(3)現場主義の経営


Twitter オフィス内の駐輪場

シリコンバレーの経営者の特徴として、本人たちも、現場出身であることが多いとあげられると思います。

なんと、今回の訪問で、Appleのスティーブ・ジョブズ氏、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏、Twitterのディック・コストロ氏、Zapposのトニー・シェイ氏に、社内で遭遇しました。みなさん、普通に会社にいらっしゃいました。

ジョブズ氏は、ご病気だと聞いていたのですが、普通にカフェテリアでランチをとられていたので、驚きました。映画にもなったザッカーバーグ氏は、会議中にもかかわらず、手を振ってくれました。トニー・シェイ氏は、緑色のタキシードをまとい、お祭り模様でした。


Zappos の CEO トニー・シェイ氏のデスク
ジャングルのインテリアでモンキー通り (Monkey Row) と呼ばれている 

まさに、顔の見える経営です。シリコンバレーでは、手を動かせるエンジニアの地位が非常に高いと聞きました。それに比べ、いわゆるビジネスマンの地位は低いとか。なので、社長も自らが現場でみんなといっしょに働くという風土が当たり前になっています。

百聞は一見にしかず。これらの企業については、いくら本で読んでも、これは大げさに書いてるんだろとか、実感がわかないことが多いと思います。今回の訪問で、今まで読んだり聞いたりしてきたことが、本当だった、あるいは予想以上だったということを体感できました。

この遊びの企業文化を、そのまま日本の企業に当てはめるのは極めて難しいと思います。しかし、この企業文化を作り上げる遊びのマインドを持つことで、日本の企業も、もっともっとイノベーションを起こしていけるのではないかと思いました。そして、前回紹介した象の柵を飛び越えることができるかもしれません。

ということで、次回は、シリコンバレーに学ぶ「新しい可能性」について書こうと思っています!

2011年3月22日火曜日

シリコンバレーに学ぶ「起業家の成功の秘訣」

春休みに、カンファレンスと企業訪問のため、西海岸に行ってきました。これから数回にわたり、その時に見聞きしたこと、そして、考えたことを書こうと思います。初回は、「起業家の成功の秘訣」についてです。

カンファレンスでは、シリコンバレーで活躍されている日本人の方のレクチャーやパネルディスカッション、テーブルディスカッションが行われました。その中でも、私が特に刺激を受けたのは、ベンチャーキャピタルで働かれている方の、「成功している起業家」についてのお話でした。


カンファレンスが行われたサンノゼ大学のキャンパス

その方は、次の6つを成功の秘訣として挙げました。

1)恐怖心に打ち勝つ精神力
2)クリエイティブ
3)インテリジェンス
4)諦めない
5)チームプレイ
6)明るいこと(辛いことがあっても、くよくよしない)

どれも、決して目新しいことではないのですが、毎日、シリコンバレーの起業家と会い、実際に投資をされている方の直々の言葉には重みがありました。その中でも、特に、1)恐怖心に打ち勝つ精神力、4)諦めない、6)明るいこと、の3つに大きな共感を覚えました。


恐怖心に打ち勝つ精神力

私の大好きな「象の話」があります。これは、私が中学校1年生の時に、国語の先生がしてくれたお話です。それを、十数年ぶりに、シリコンバレーの地で聞くことになりました。

小象を柵の中で飼います。暴れん坊の小象は、柵を抜け出そうとして毎日、暴れます。暴れるたびに、小象はおしおきをされます。そうすると、だんだんに暴れなくなって、柵の中でおとなしくするようになります。やがて、小象は大きな大人の象になります。

そして、ある日、柵を外してみました。しかし、象は柵の外へと出ようとはしません。怖くて出られないのです。いや、そもそも柵の外に出るということ自体思いつけない思考になってしまったのでしょう。


ラスベガスMGMホテルで飼いならされたライオン
象と同じ心境かもしれない

この話を思い出すたびに、私も、見えない柵の中にいるのだと、自分を戒めています。この柵から外に飛び出す勇気を持たなくてはいけません。シリコンバレーには、この柵を飛び出しやすい環境が整っていると思います。これについては、また後日書こうと思います。


諦めない

以下の二つの言葉が印象的でした。

「成功する秘訣は成功するまでやめないこと」

「成功とは失敗をManageすることの積み重ね」

成功している企業の業績は、伸びています。しかし、本当に常に伸びているのでしょうか?年単位で伸びている企業も、月単位、日単位では、実は、アップダウンの繰り返しだったりするそうです。その中で、経営者は毎日胃がキリキリする思いをしながら、諦めずに失敗から成功を紡ぎ出しているのです。

とにかく、諦めないことが成功へ導いてくれるのです。

かのリンカーンも、23歳で州議会落選、25歳で事業に失敗、26歳で失恋、27歳でノイローゼ、34歳から46歳までに下院議会選挙で5回落選、46歳で上院議会選挙で落選、47歳で副大統領選で落選。。。という失敗の連続を経て、51歳で大統領になったそうです。失敗に負けない強靭な精神力の持ち主だったのでしょう。


世界一曲がりくねった坂道
サンフランシスコのロンバートストリート

明るいこと

上に立つものがくよくよしていては、組織は動きません。どんな時も、明るく元気よくすることが成功の秘訣だそうです。こういった性格が人徳を寄せ付け、運気を押し上げて、成功に導いてくれるのでしょう。

シリコンバレーの陽気な天気は、そんな人間の明るさを引き出してくれる気がします。


天高く聳えるヤシの木

ということで、今回は、シリコンバレーでのレクチャーに学ぶ成功の秘訣でした。次回は、訪問した企業のリポートと絡めながら、シリコンバレーのカルチャーについて書いてみようと思います。

2011年3月21日月曜日

東日本大震災 お見舞い申し上げます

東日本大震災で、被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。もう一度元気な日本に一日も早く戻れることをお祈りしております。そして、アメリカから、何らかの形で復興に貢献していきたいと考えております。

アメリカ時間の深夜、ちょうど3月10日が終わり、翌日のファイナンスの試験に向けて勉強をしておりました。3月11日深夜1時過ぎに、いとこから「取り急ぎ無事です」というメールを受信しました。何のことかわからず、ネットでニュースを見てみると、地震が起こったとのこと。

その時は、まだ深刻さがわからなかったのですが、そのあと、日本人の同級生から電話が来ました。「日本が大変なことになっている」と。すぐにツイッターのTLを確認してみると、信じられないことが起きていることがわかりました。

ツイッター上で、NHKの中継を見られるUstreamのリンクが何度もリツイートされていたので、すぐにそれを見てみました。現実とは思えない映像に、心臓が止まる思いでした。

翌日学校へ行くと、教職員の方々や、クラスメートから、家族や友人の安否を心配されました。そして、ことの重大さを再認識しました。

その後の1週間は、予定されていた西海岸でのカンファレンスと会社訪問があったので、しばらくボストンを離れていました。その間も、報道はずっと日本のことでしたし、海外のいろいろな方から、心配や激励のメールをいただきました。

ニュースを見る限り、まだまだ危機的状況は続いているようですし、今後の復興費用は15兆円から20兆円とも言われています。長期的な復興活動に少しでも貢献できるよう、あらゆる面から自分ができることをこなしていきたいと考えております。

2011年3月6日日曜日

メープルの滴

最終生産物しか見えないこの消費社会で、モノの生産工程を見る機会はとても貴重です。ということで、メープルシロップの生産工程を見に、ボストン西南、Uxbridgeという町のBlackstone Valleyというところに、行ってきました。
http://www.blackstonevalleysugaring.org/

ボランティア中心に運営しているメープル・シロップ生産のビジターセンターです。地元の農家の方々が、兼業でメープルシロップを作られています。


ニューイングランドの雰囲気が漂うビジターセンター

始めに、メープルシロップのレクチャーをしていただきました。なんと、メープルの木から、シロップのもととなる樹液がとれるのは、この3月の初めの20日間だけだそうです。とても短い期間です。


ボランティアスタッフの方によるレクチャー

メカニズムとしては、夜、氷点下の寒い中、樹木中の水分が凝縮されて圧縮されます。それが、日中気温が上がって暖かくなると、膨張します。そこで、樹木に小さな穴をあけると、樹液が外にこぼれてくるのです。つまり、この「寒暖差」という気候条件がそろわないと、メープルの樹液はとれません。現在、生産が可能な国は、3か国だけだそうです。カナダ、アメリカ、そして、なんと、日本!Wikipediaによると、埼玉県秩父市で作っているそうです。)

レクチャーの後は、いよいよ外へ。実際に樹液採取です。樹木に小さな穴を掘ると、すぐにポタポタと樹液がこぼれてきます。それをバケツでキャッチ。指先に垂らしてなめてみました。無色透明、粘りなし。ほんのり甘い水といったところです。


以前、あけた穴には白いマークがついている
それを見ながら、どこに穴をあけるか狙いを定める



指に垂れ落ちるメープルの雫


雪が溶けて湿った地面から、水分と養分を吸収

昔、ネイティブアメリカン(アメリカン・インディアン)が、どうやってメープルシロップを作っていたかのデモンストレーションを見ました。採取した樹液に、焼石を放り込む。そうすると、一気に蒸発します。この時の湯気の香り、お祭りの綿菓子にそっくりです。


ネイティブアメリカンの工程を模倣

防水のこの器は、カヌーを作るときの樹皮から作られている

焼石を放り込み、沸き立つ甘い湯気

これは、現代版のメープルシロップを生産するマシーン。ものすごい湯気が立ち込めます。


すごい勢いで立ち込める湯気

最後は、サンプルをいただいて、お土産コーナー。メープル・テリヤキ・ソースという不思議な商品もありました(笑)


ツアーの最後はやはりサンプルの試食

メープル・テリヤキ・ソース。。。

さて、こういった一連のメープルシロップのプロモーションは、マーケティングでは、「シェア・オブ・マインド」(心の占有率)の向上の一環と考えられます。商品の認知から購買までの行動は、一般的に、AIDAと呼ばれる4つのステージに分けられます。「Awareness:認知」⇒「Interest:興味」⇒「Desire:欲求」⇒「Action:購買」。この最初の2ステージにおいて、どうやってより多くの消費者の認知を得て、興味を促すか。そして、いかにして、消費者の頭の中に「メープルシロップ」を占有させるか。それが、最終的な購買行動につながっていくのです。また、ソーシャルメディアも意識して、Facebookのサイトもちゃんと作っています。http://www.facebook.com/blackstonevalleysugaring ITリテラシーが農家まで浸透しているのは、アメリカのすごいところだと思います。

というMBA的な理屈は抜きにして、農家の方々は、楽しそうにボランティアで(無給で)活動をしていました。純粋に、自分たちの育てているものをみんなに知ってもらいたいというピュアな気持ちが感じられました。いいものを作ったら、それをみんなに食べてもらいたいと思う。これが、モチベーションの源泉になってるビジネスは、消費者に幸せをもたらすと思います。

ボランティアの子供たちが作ったスノーマン