2012年6月25日月曜日

卒業、帰国、1ヶ月。

無事にMBAを卒業して日本に帰国してから、1ヶ月が経ちました。日本での生活も少しずつペースをつかみ始めてきました。果たして、MBAとは自分にとって何だったのか、一体、何を学んできて、それがどう生かせるのか? それは、これからの私のキャリアの中で、だんだんに分かってくるものだと思います。

さて、現時点で、MBAに対する一つの見解を書いておこうと思います。

MBAは、経営について学ぶところなのですが、経営とは、「戦略立案」と「戦略実行」に大きく二つ別れると思います。一般的に、MBAと言うと、この「戦略立案」に関わる部分を学ぶというイメージが強いと思います。どんな資金調達方法があって、どんなときに、どんな方法が有効なのか。どういう業態のとき、どういうオペレーションが効率的なのか。マーケティングにどれだけコストをかければ、どういう効果が得られるのか?etc...

このような戦略を考えた上で、実際にその戦略を実行していくのが経営です。MBAで学ぶことは、本でも学べると言われるのは、本当のことで、この戦略立案に関わる部分は、すべて本で学べると思います。

しかし、これをどうやって実行していくかということこそ、MBAの醍醐味なのではないかと感じました。

私のクラスメートの言葉をお借りして、バブソンのMBAでは、経営の「おままごと」をさせられます。それもチームで。ケースや実際の企業を相手に、戦略を考え、それをどうやって実行していくかをみんなで考える機会があります。また、課外活動では、実際に自分たちでイベントをしたりして、これもまた、戦略立案と戦略実行です。実際のビジネスに比べれば、とるリスクは軽微ですが、人間関係のマネジメントや、予期せぬ事柄への対処法は、近いものがあると思います。

いくら自分でいい戦略を考えても、外部要因によって、実行方法は変わっていきます。それにどうやって対応し、質、量、スピードともによいものを作っていけるかをたくさん体験しました。

この「戦略実行」のプロセスを体得することこそが、MBA留学の醍醐味であり、各学校の持ち味が出るところであり、卒業後に役立つことなのだと思います。 

というわけで、卒業しました。

2012年3月10日土曜日

「優秀」な人材になるために


とにかく「人が大事」といろんな経営者の方がおっしゃっています。みんなが言うので、つい、聞き流してしまうことが多いです。しかし、少し深堀してみたいと思います。

今とっている人事戦略の授業で、採用について勉強しています。

どんな会社も、「優秀」な人材が欲しいと思っています。パフォーマンスの高い会社にするためには、人材がとても重要であることは確かです。しかし、この「優秀」というキーワードを曖昧なままにしていると、採用コストばかりが増え、せっかく「優秀」な人が入っても、すぐに離職してしまったりと、うまくいかないことが多いです。

この人材の優秀さをコンピテンシーと呼びます。そして、どんなコンピテンシーが会社にとって必要なのかをしっかりと定義し、それに合わせた人材を採用することが求められるのです。仕事によって、このコンピテンシーは全く異なります。例えば同じシェフという仕事でも、大型ホテルのシェフと座席数20名のビストロのシェフとでは、求められるオペレーション能力、料理スキル、クリエイティビティが全く違うものなのです。

では、このコンピテンシーとは何なのでしょうか?授業では、これを3つのカテゴリーに分けました。

1)テクニカルスキル (Technical skills and content knowledge)
仕事における、知識や技術です。法律、会計、ファイナンスの知識や、プログラミングの技術。また、町工場の職人さんの金型の加工技術や板前さんの包丁さばきのことです。トレーニングや経験によって養われるものが多いです。

2)思考力 (Cognitive abilities)
1を聞いて10を考える力や、それを考えるスピードです。初めての仕事に対して、いろいろと想像力を働かせて行う決定や、忙しいときに、とっさに行う判断を的確にするには、この思考力が活躍します。

3)人間力 (Behavioral and interpersonal skills, motives, personality styles, self-concept)
チームワークやリーダーシップなどの対人コミュニケーションの力です。仕事を行う上で、誰かとかかわり合うことは必須です。そのかかわり合いの中で、交渉や協力を円滑に行うために大事な力です。





この3つをバランスよく持っていることがとても大事なのです。そして、採用の際には、この3つそれぞれにおいて、具体的にどんな力を持っている人が欲しいのかを徹底的に議論して、明らかにします。そして、どうしたら、その力を計測できるかを考え、採用のプロセスを考えるのです。採用プロセスに用いられるツールによって、計測できる力は変わってきます。

例えば、履歴書を見てわかるのは、1のテクニカルスキルだけです。面接で、頭を使う質問をすれば、2の思考力が見られるでしょう。3に関する質問をしても、あらかじめ用意されていた応答がされるかもしれません。その場合には、少し時間をかけながら、食事をしたり、学生であれば、グループディスカッションをしてもらったり、短期でインターンとして働いてもらうことで、チェックできるかもしれません。

私自身、前職で新卒採用の仕事にかかわらさせていただいていたので、このトピックはとても興味深いものでした。学生の採用においては、1のテクニカルスキルはあまり見られず、2の思考力と3の人間力が見られることが多いと思います。中途採用の場合は、1を中心に見て、2と3もきちんと伴っているかが見られます。また、マネジメントレベルになればなるほど、3が求められるようになってきます。

このフレームワークは、キャリア形成にも役立つと思います。私が、MBAに来た理由は、1と3を鍛えたいという目標がありました。実際に、海外での生活、MBAでのグループワークやリーダーシップ経験は、人間力についていろいろと考えさせられ、少しはついてきたのではないかなあと思っています。

このように、「優秀」な人材とはどんな人材なのかをよくよく考え、社内で議論をしてから、採用をするというのはとても大事だと思いました。また、自分も、「優秀」な人材になるために、どんな力をつけていけばいいのかを整理するのにも、とても有効なフレームだと思いました。