無事にMBAを卒業して日本に帰国してから、1ヶ月が経ちました。日本での生活も少しずつペースをつかみ始めてきました。果たして、MBAとは自分にとって何だったのか、一体、何を学んできて、それがどう生かせるのか?
それは、これからの私のキャリアの中で、だんだんに分かってくるものだと思います。
さて、現時点で、MBAに対する一つの見解を書いておこうと思います。
MBAは、経営について学ぶところなのですが、経営とは、「戦略立案」と「戦略実行」に大きく二つ別れると思います。一般的に、MBAと言うと、この「戦略立案」に関わる部分を学ぶというイメージが強いと思います。どんな資金調達方法があって、どんなときに、どんな方法が有効なのか。どういう業態のとき、どういうオペレーションが効率的なのか。マーケティングにどれだけコストをかければ、どういう効果が得られるのか?etc...
このような戦略を考えた上で、実際にその戦略を実行していくのが経営です。MBAで学ぶことは、本でも学べると言われるのは、本当のことで、この戦略立案に関わる部分は、すべて本で学べると思います。
しかし、これをどうやって実行していくかということこそ、MBAの醍醐味なのではないかと感じました。
私のクラスメートの言葉をお借りして、バブソンのMBAでは、経営の「おままごと」をさせられます。それもチームで。ケースや実際の企業を相手に、戦略を考え、それをどうやって実行していくかをみんなで考える機会があります。また、課外活動では、実際に自分たちでイベントをしたりして、これもまた、戦略立案と戦略実行です。実際のビジネスに比べれば、とるリスクは軽微ですが、人間関係のマネジメントや、予期せぬ事柄への対処法は、近いものがあると思います。
いくら自分でいい戦略を考えても、外部要因によって、実行方法は変わっていきます。それにどうやって対応し、質、量、スピードともによいものを作っていけるかをたくさん体験しました。
この「戦略実行」のプロセスを体得することこそが、MBA留学の醍醐味であり、各学校の持ち味が出るところであり、卒業後に役立つことなのだと思います。
というわけで、卒業しました。
2012年6月25日月曜日
2012年3月10日土曜日
「優秀」な人材になるために
とにかく「人が大事」といろんな経営者の方がおっしゃっています。みんなが言うので、つい、聞き流してしまうことが多いです。しかし、少し深堀してみたいと思います。
今とっている人事戦略の授業で、採用について勉強しています。
どんな会社も、「優秀」な人材が欲しいと思っています。パフォーマンスの高い会社にするためには、人材がとても重要であることは確かです。しかし、この「優秀」というキーワードを曖昧なままにしていると、採用コストばかりが増え、せっかく「優秀」な人が入っても、すぐに離職してしまったりと、うまくいかないことが多いです。
この人材の優秀さをコンピテンシーと呼びます。そして、どんなコンピテンシーが会社にとって必要なのかをしっかりと定義し、それに合わせた人材を採用することが求められるのです。仕事によって、このコンピテンシーは全く異なります。例えば同じシェフという仕事でも、大型ホテルのシェフと座席数20名のビストロのシェフとでは、求められるオペレーション能力、料理スキル、クリエイティビティが全く違うものなのです。
では、このコンピテンシーとは何なのでしょうか?授業では、これを3つのカテゴリーに分けました。
1)テクニカルスキル (Technical skills and content knowledge)
仕事における、知識や技術です。法律、会計、ファイナンスの知識や、プログラミングの技術。また、町工場の職人さんの金型の加工技術や板前さんの包丁さばきのことです。トレーニングや経験によって養われるものが多いです。
2)思考力 (Cognitive abilities)
1を聞いて10を考える力や、それを考えるスピードです。初めての仕事に対して、いろいろと想像力を働かせて行う決定や、忙しいときに、とっさに行う判断を的確にするには、この思考力が活躍します。
3)人間力 (Behavioral and interpersonal skills, motives, personality styles, self-concept)
チームワークやリーダーシップなどの対人コミュニケーションの力です。仕事を行う上で、誰かとかかわり合うことは必須です。そのかかわり合いの中で、交渉や協力を円滑に行うために大事な力です。
この3つをバランスよく持っていることがとても大事なのです。そして、採用の際には、この3つそれぞれにおいて、具体的にどんな力を持っている人が欲しいのかを徹底的に議論して、明らかにします。そして、どうしたら、その力を計測できるかを考え、採用のプロセスを考えるのです。採用プロセスに用いられるツールによって、計測できる力は変わってきます。
例えば、履歴書を見てわかるのは、1のテクニカルスキルだけです。面接で、頭を使う質問をすれば、2の思考力が見られるでしょう。3に関する質問をしても、あらかじめ用意されていた応答がされるかもしれません。その場合には、少し時間をかけながら、食事をしたり、学生であれば、グループディスカッションをしてもらったり、短期でインターンとして働いてもらうことで、チェックできるかもしれません。
私自身、前職で新卒採用の仕事にかかわらさせていただいていたので、このトピックはとても興味深いものでした。学生の採用においては、1のテクニカルスキルはあまり見られず、2の思考力と3の人間力が見られることが多いと思います。中途採用の場合は、1を中心に見て、2と3もきちんと伴っているかが見られます。また、マネジメントレベルになればなるほど、3が求められるようになってきます。
このフレームワークは、キャリア形成にも役立つと思います。私が、MBAに来た理由は、1と3を鍛えたいという目標がありました。実際に、海外での生活、MBAでのグループワークやリーダーシップ経験は、人間力についていろいろと考えさせられ、少しはついてきたのではないかなあと思っています。
このように、「優秀」な人材とはどんな人材なのかをよくよく考え、社内で議論をしてから、採用をするというのはとても大事だと思いました。また、自分も、「優秀」な人材になるために、どんな力をつけていけばいいのかを整理するのにも、とても有効なフレームだと思いました。
2011年12月26日月曜日
正義 vs 正義
2週間前に、秋学期も終わり、MBA生活も残すところ半年となりました。2年目は、1年目の過酷なケース読解と知識吸収の生活と比べると、かなり余裕を持って、一つ一つの事象について考察をめぐらすことができました。それは、1年目に築いた体系的な知識とケース読解力が基礎にあったからできたことなのかもしれません。ものごとの考え方も、大きな枠で考えることができるようになってきたのではないかと感じています。
特に、ネゴシエーション(交渉術)のクラスは、私の考え方に大きな影響をもたらしたと思っています。授業が始まる前は、アメリカ型の交渉術というと、どうやって相手を打ち負かして勝つかという戦略を教えてもらえるのだと期待していました。しかし、実際には、相手とどうやってより大きな価値を創成していくかを教わりました。交渉は、「相手とのパイの奪い合い」ではなく、「相手とより大きなパイを創造する共同作業」なのです。そのために、どんなマインドセットで、どんな準備をして、どんな会話をしていくかを、練習しました。ハーバード大学の交渉ネットワーク研究所のテキストを使いましたので、和訳のものを3冊紹介します。
交渉とは相手と大きなパイを創成する共同作業 |
また、2年目も、たくさんのチームワークの機会がありました。その中で、相手の立場になってものごとを考えることの大切さを改めて認識しました。それは、会議の進め方やリーダーシップというような大きな話ではなく、普段のちょっとした言葉の言い回しやちょっとした気遣いがとても大事であると気づきました。
このような2年目の考察を元に、相手への理解を深めることの大事さを改めて考えたいと思います。世の中、何かと、「正義」と「悪」を作りたがる傾向があります。そして、自分は「正義」、相手は「悪」という分かりやすい二項対立のモデルに落とし込みます。そして、いかにして、その「悪」に打ち勝つかを考えるのがうけるストーリーになっています。少し前までのアメリカ映画はこの手の話がとても分かりやすく描かれていました。例えば、ディズニーの映画でも、「正義」と「悪」は分かりやすく表現され、「悪」が滅んでハッピーエンドというのが定番です。しかし、最近、このモデルに変化があるように思います。
一昨年、マイケル・サンデル先生の白熱教室でも、「正義」にはいろいろな形があるということが議論されていましたし、今ブロードウェイではやっているウィキッドというミュージカルも、どうして「悪い」魔女が誕生してしまったかという悲劇のストーリーに焦点が当てられています。すなわち、「正義」というものがあやふやな時代になってきているのです。そして、「自分が正義」で「それに反対する者は悪」という分かりやすいストーリーは、古い価値観になってきています。
西部劇で適役はアメリカ先住民。 写真は、マサソイト酋長像。マサチューセッツ州プリマスにて撮影。 |
自分も正しいし、相手も正しい。ただ、互いが「違う」歴史を所有していたり、「違う」組織を代表していたり、「違う」価値観を持っているというだけの話なのです。となると、大事なのは、その「違う」主張をどうやって共存させて、より大きな価値を創造していくかが、腕の見せ所になっていくのだと思います。
自分の意見を否定されると、不安になって自己正当化のための防御をしたり、相手を攻撃したりしてしまうことがあります。しかし、相手の「違う」意見に好奇心を持って、耳を傾けてみることが第1ステップです。そして、なんで相手がそう思っているのかを理解して、自分も相手も得をする結果をどうしたら得られるか考え、話合うのです。
例えば、私利私欲を肥やすために、人を無下に扱い、非人道的なことばかりを行っている人がいるとします。こういう人は、一般的に「悪」というポジショニングがされます。そして、その人を征伐するのが、「正義」です。しかし、ここで、征伐するのではなく、なんでその「悪」の人がそんな行動をとるのか理解してみることが大切です。もしかしたら、そうせざるをえない痛ましい事情や悲哀な歴史があるかもしれません。それを理解して、解決方法をはかるのがより大きなパイの創造です。企業の不祥事や政治家の不適切な言動も、その裏の事情や歴史を理解しなくては、結局のところ、同じような事件が繰り返されるでしょう。
自分も正義、相手も正義、というポジショニングをして、大きな視点から話し合いをする。その力をもっと鍛えていきたいと思います。
2011年10月21日金曜日
日本、絶賛の国へ
私は、世の中を元気に溢れさせたいと思っています。それで、いろいろと方向性を探っています。
将来的に、私は、世の中に、怒濤のように元気を供給していきたいと考えていますが、今できることは何なのかと考えることがあります。
紅葉のニューハンプシャーにて |
そんなことを常々、思いながら、「夢をかなえるゾウ」の著者の水野敬也先生のブログ「ウケる日記」を読んでいると、とてもすばらしい記事に巡り会いました。
ぜひ、全文を読んでいただきたいのですが、要約すると、「人は褒められて伸びる。だから、人を賞賛しよう!」というプロジェクトなのです。日本は、今、人を褒めるよりも人を批判する雰囲気の方が強いのではないでしょうか?だから、その空気を変えて行こうというお話です。
大賛成です。
大賛成すぎて、水野先生にメールを出してみました。すると、すぐに返信をいただきました。
早速、プロジェクトは始動しているようです!
ツイッターのハッシュタグで「#絶賛」というのを提案してくださった方がいたということで、水野先生も、始められたそうです。
身の回りで素晴らしい人や出来事をつぶやいて「#絶賛」をつけます。
先日、Japan as No.1 (1979) の著者のハーバード大学のヴォーゲル先生のお話をお伺いするチャンスがありました。先生は、「日本は心配なことがたくさんあるけど、人と人が助け合う基本的な社会構造は、1979年の当時から変わらずにすばらしい」とおっしゃっていました。だから、この日本の良さを大事にして、
批判から絶賛へのムーブメントを作っていきましょう!
2011年9月23日金曜日
マーケティングの枠組み
2年目のプログラムが始まり、3週間がたちました。実践的な授業が進む中で、マーケティングの枠組みについてまとめておこうと思います。
世の中、商品やサービスが先に存在し、それをどうやって売るかと考えるのが一般的です。しかし、バブソン大学で教わるマーケティングでは、少し順番が違います。今回は、1年生のマーケティングの授業で、年間とおして使って来た「Bob Dolan's Model」を用いて、説明したいと思います。
このモデルでは、「世の中のチャンス」を見つけるところから入るのです。そして、チャンスを見つけたら、それをビジネスにするために、ターゲットとなる顧客を選定します。そして、その顧客にどのような価値提供をするのかをコンセプト化します。そして、ここで初めて、商品やサービスの内容を考えます。さらに、どこでどうやって売るのか、プロモーションをどうするのか、考えます。これらが決まったら、次に、価格を決めます。そして、最後に、どうやって新規顧客を得て、顧客を維持していくかを考えるのです。
では、この上の図を見ながら、もう少し、詳しく見ていきます。まずは、まずは、機会の創出ですが、これは、「5C」と呼ばれる、顧客(Customers)、会社(Company)、競合(Competitors)、協力者(Collaborators)、文脈(Context)の5つを見ることで、浮かび上がってきます。
そして、ターゲットとなる顧客の選定ですが、これは、STPというプロセスにのって行います。まずは、Segmentationです。市場を趣向によって、いくつかのグループに分けます。そして、その中のどのグループに売るのかを考えます(Target)。そして、そのグループに合わせて、ビジネスをPositioningします。
これが終わると、そのビジネスが顧客に提供する「価値」が見えてきます。これを、バブソンでは、「カスタマー・バリュー・プロポジション」(Customer Value Proposition)と呼んでいます。そこで、「〇〇という商品は、どういう顧客層に、どういうコンセプトで、どういう価値を提供します」という明言化がされます。
カスタマー・バリュー・プロポジションができたら、次は、商品やサービスの内容を決めます(Product)。ここが、重要なポイントだと思うのです。すなわち、売りたいものを売るのではなく。顧客に提供する価値に合わせてものを作って売るのです。そして、売る場所(Place)を決めます。物理的な場所に限らず、流通やそれにまつわるロジスティクスもここに含まれます。そして、宣伝方法(Promotion)を考えます。ここまできて、次に、価格を決めます(Price)。これらが、俗にいう、4Pです。
そして、最後に、どうやって、新規顧客を得て、顧客を維持していくかを考えます。
これが、マーケティングの一連の流れです。長いプロセスですが、大事なのは、売りたいものを売るのではなく、「顧客に提供する価値」に合わせてものを作って売ることなのです。この「顧客に提供する価値」をきちんと定めることがとても重要なのです。
2011年9月10日土曜日
モノ・サービスの良さを伝える力
8月31日から、バブソンMBAの2年目のプログラムが始まりました。2年目からは、ついに選択制の授業となります。また、夜だけのパートタイムの学生と同じ授業を受けるので、午後中心のクラス編制です。夜の6時半から9時までという遅いクラスがメインです。毎日朝8時から授業があった1年目と比べると、生活リズムを変える必要があります。
さて、2年目ですが、選択制ということもあり、何を中心に勉強していくかという柱のようなものが必要になります。私の場合は、マーケティングを中心に、ビジネスマンとしてのソフトスキル、数字感覚を磨いていこうと思っています。そこで、次の4つの授業をとりました。(短期集中のインテンシブ授業は別途。)
- グローバル・マーケティング・ストラテジー:世界市場でのマーケティング戦略をを学びます。
- ブランド・マネジメント:ブランドをどうやって作り、ビジネスに生かしていくかを学びます。
- ネゴシエーション:アメリカ流のビジネス現場での交渉術を学びます。
- アントレプレナー的ファイナンス:起業家および中小企業がどのように資金を調達するか学びます。
本題と関係ないですが、ハリケーン・アイリーンで倒された木 |
では、なぜ、私がマーケティングを中心に据えて勉強していこうと思ったか、なのですが、今の日本において、一番のびしろがあり、かつ、伸ばしていかなければならない分野だと思ったからです。日本は、質の高い商品とサービスにあふれ、それらが、効率の良いオペレーションで提供されている国だと思います。だから、今までは、そういったものを輸出することで、国際競争力を高めてきました。しかし、いつの間にか、他の国の、商品、サービス、オペレーションのレベルが日本に追いついてきました。となると、日本の優位性は相対的に低下せざるを得ません。そうなった今、こうして同質化し始めた商品、サービスを「どうやって売るのか」が今後の競争力の源泉になっていくのではないでしょうか?
インターンをしている時に、ボストンやニューヨークで活躍されている凄腕の職人さん方と一緒に働く機会がありました。その方々とお話をして、みなさんがおっしゃっていたのが、アメリカ人は能書きが好きだということです。例えば、同じミネラルウォーターでも、効能を得々と述べているものには、アメリカ人は飛びつくのだそうです。「この水は、夜に飲むとリラックス効果があります」と書かれた水と、何も書かれていない水、まったく同じ質の水でも、前者が売れるのです。そして、アメリカは、この言葉作りが驚くほどうまいです。
このように、どうやって、「モノ・サービスの良さをお客様に伝えるか」が、今の競争社会で生き残るキーになってきているのです。しかし、このテクニックは、日本では、文化的に許容されにくいのではないかと思うのです。だからこそ、マーケティングの発展が遅れてしまった気がするのです。
例えば、これらの言葉を見てみます。
- 手前味噌ですが、、、(自分のつくったものをへりくだって)
- つまらないものですが、、、(贈り物をへりくだって)
- 能書きはいい。飲めばわかる。(能書きではなく、モノの本質がすべてだという含みを込めた日本酒のCM。中尾彬の名言)
どうも、日本では、「このモノはすごいんですよー」、とか、「このサービスはすごいんですよー」というのは、文化的に受け入れられにくいのではないかと思うのです。発信者の謙遜による自粛が主な原因です。そうすると、国際市場で、言葉巧みな外国企業に、負けてしまうのです。
とはいえ、確実に、能書きのトレンドは日本にも来ています。先日、和民のメニューを見ていて驚いたのです。
「頑固一徹!揚げたて厚揚 日本人の心にしみる味…自家製たまり醤油ソースで」
和民のウェブサイトに掲示されているメニューより |
つまり、厚揚なのですが、こんなに長い説明がついているのです。これは、いわば、味の勝負から、言葉の選択の勝負になっているなと感じました。だいたい、どこの居酒屋チェーンに行っても、それなりに美味しいものが出てくる時代になりました。そうなると、味で差別化をするのが難しくなってきます。ということで、こういった言葉による付加価値を添えて、お客様が体験する価値を増幅させるというのがトレンドなのでしょう。
と長く論じつつも、能書きをたれるのが、マーケティングだとは思いません。あくまで、マーケティングの一つの手法です。違う言い方をすると、今、日本に必要なのは、モノ・サービスの良さを伝える力だと思います。そして、その力に大きな助けになるのがマーケティングだと思います。だから、マーケティングを勉強します。
次回は、マーケティングの骨組みについてまとめようと思っています。
2011年9月8日木曜日
インターンを終えて
8月26日で、3ヶ月間にわたる夏のインターンが終わりました。結果的に、1年目に勉強した内容を実践し、2年目に学ぶ内容の焦点を定めるのに、とてもいい経験をさせていただきました。ボストンのメインストリートでの日本食レストランのスタートアップということで、毎日が予期しないことの連続でした。最初の1ヶ月ほどは、開店準備のための清掃やペンキ塗りをひたすら行いました。スタートアップらしく、自分でやれることは自分でやるという姿勢を学びました。そして、7月に入ると、オープンを目前に控え、キッチンマネジメントの仕事にアサインしていただきました。効率的なオペレーションの確立と外国人コックのスーパーバイザー的な仕事を手伝わさせてもらいました。数えきれないほどの学びと驚きがあった3ヶ月間でした。その3ヶ月を通し、最初に立てた3つの目標は達成できたか考えてみたいと思います。
常識を打ち破れ
まず、第1の、「日本流のサービスとアメリカ型の経営の融合」についての学びですが、正直、経営に関しては、3ヶ月という短い期間でしたので、深く携わることはできませんでした。ただ、アメリカ人の嗜好に関する、沢山の発見をすることができました。そして、それは、私の常識を打ち砕く、毎日が驚きの連続でした。アメリカ人(一括りにしていますが、レストランがターゲットとしていたボストンのアメリカ人に限定)は、寿司というと、カリフォルニアロールに代表されるロールスシを指します。そして、魚の味を消してしまうくらい、醤油やスパイシーマヨネーズ、うなぎのたれをつけて食べます。いわば、ソースの味を楽しんでいます。これは、日本人の感覚からすると、「邪道」だし、なんだか、残念な気持ちになります。しかし、これが、彼らの食べ方であり、これで、美味しいと喜んでいただけるのであれば、それがここでのホスピタリティー(おもてなし)なのです。生魚の美味しさを伝えようとして、それを押し付けてしまうのは、自己満足に他なりません。だから、頭を柔らかく、心を広くもたなくてはなりません。
これに、気づくのに、僕は時間がかかりました。しかし、時間をかけて、生魚の美味しさは伝えていくことも大事だと思っています。全員に受け入れられる必要はないのですが、きっと興味のあるお客様もいます。そういうチャンスを拾っていくのが文化の伝播であり、ビジネスにもなるのでしょう。また、この「邪道」から新しいチャンスが生まれることもあるのです。30年前、西海岸でカリフォルニアロールが作られたとき、それは邪道だったでしょう。しかし、今や、アメリカの市民権を得て、堂々とSushiの代表になっています。
仕事に対する魂
第2の「現場での感覚を養う」という目的ですが、こちらは、かなり達成できたと思っています。一般的に、インターンというと、責任・権限のない傍観者的なポジションであることが多いです。しかし、小さなスタートアップビジネスであるが故、キッチンマネジメントという責任・権限を与えていただきました。冷や汗をかきながら、危機を乗り越えたり、時には、失敗をして会社にコストをかけてしまったこともありました。しかし、こういった経験が、私の仕事に対する魂を呼び覚ました。働くことは、楽しいことです。特に、私は、こうした人間と人間が日々ふれあう仕事が好きです。その気持ちを再確認できたことが大きな収穫だと思っています。
起業家精神の神髄
第3の「起業家精神にどっぷりと浸かる」ですが、オーナーさんの口癖でとても印象に残った言葉があります。私が、インターンを始めてすぐの頃、何かは忘れましたが、「これはできないかもしれないです」と言いました。そうすると、オーナーさんはこう返しました。「『できない』じゃなくて、『どうやったらできるか』を考えるのが経営者なんだよ」と。これを聞いたとき、僕の背中に戦慄が走りました。これこそ、起業家精神の神髄なのではないかと思いました。レストラン自体は、スタートアップですので、すべてが初めてで、わからないことばかりでした。だから、「どうやったらできるか」を考えなくては、前に進めないのです。そして、そこには、必ず、答えがあるのです。
本当に、たくさんのことがあったので、ここに書いたことは、学びのごくわずか一部分です。これらの経験をさせていただきました、オーナーさんを始めとする、レストラン関係者様には、大変お世話になりました。この経験をとおして、自分に足りていないことや、今の日本のホスピタリティービジネスに足りていないこと、を発見することができました。これらを課題にすることにより、2年目のビジネススクールでの勉強のフォーカスが定まりました。そして、先週より、いよいよ2年目がスタートしました。今後も、思ったこと、感じたこと、学んだことをアップしていこうと思います。
常識を打ち破れ
まず、第1の、「日本流のサービスとアメリカ型の経営の融合」についての学びですが、正直、経営に関しては、3ヶ月という短い期間でしたので、深く携わることはできませんでした。ただ、アメリカ人の嗜好に関する、沢山の発見をすることができました。そして、それは、私の常識を打ち砕く、毎日が驚きの連続でした。アメリカ人(一括りにしていますが、レストランがターゲットとしていたボストンのアメリカ人に限定)は、寿司というと、カリフォルニアロールに代表されるロールスシを指します。そして、魚の味を消してしまうくらい、醤油やスパイシーマヨネーズ、うなぎのたれをつけて食べます。いわば、ソースの味を楽しんでいます。これは、日本人の感覚からすると、「邪道」だし、なんだか、残念な気持ちになります。しかし、これが、彼らの食べ方であり、これで、美味しいと喜んでいただけるのであれば、それがここでのホスピタリティー(おもてなし)なのです。生魚の美味しさを伝えようとして、それを押し付けてしまうのは、自己満足に他なりません。だから、頭を柔らかく、心を広くもたなくてはなりません。
アメリカ人に人気のスパイシーマヨネーズがかかったロール寿司 |
これに、気づくのに、僕は時間がかかりました。しかし、時間をかけて、生魚の美味しさは伝えていくことも大事だと思っています。全員に受け入れられる必要はないのですが、きっと興味のあるお客様もいます。そういうチャンスを拾っていくのが文化の伝播であり、ビジネスにもなるのでしょう。また、この「邪道」から新しいチャンスが生まれることもあるのです。30年前、西海岸でカリフォルニアロールが作られたとき、それは邪道だったでしょう。しかし、今や、アメリカの市民権を得て、堂々とSushiの代表になっています。
Best of Boston 2011に輝いた某レストラン の寿司の上にはイチゴが。。。 この「邪道」もやがてスタンダードになるかもしれない |
仕事に対する魂
第2の「現場での感覚を養う」という目的ですが、こちらは、かなり達成できたと思っています。一般的に、インターンというと、責任・権限のない傍観者的なポジションであることが多いです。しかし、小さなスタートアップビジネスであるが故、キッチンマネジメントという責任・権限を与えていただきました。冷や汗をかきながら、危機を乗り越えたり、時には、失敗をして会社にコストをかけてしまったこともありました。しかし、こういった経験が、私の仕事に対する魂を呼び覚ました。働くことは、楽しいことです。特に、私は、こうした人間と人間が日々ふれあう仕事が好きです。その気持ちを再確認できたことが大きな収穫だと思っています。
起業家精神の神髄
第3の「起業家精神にどっぷりと浸かる」ですが、オーナーさんの口癖でとても印象に残った言葉があります。私が、インターンを始めてすぐの頃、何かは忘れましたが、「これはできないかもしれないです」と言いました。そうすると、オーナーさんはこう返しました。「『できない』じゃなくて、『どうやったらできるか』を考えるのが経営者なんだよ」と。これを聞いたとき、僕の背中に戦慄が走りました。これこそ、起業家精神の神髄なのではないかと思いました。レストラン自体は、スタートアップですので、すべてが初めてで、わからないことばかりでした。だから、「どうやったらできるか」を考えなくては、前に進めないのです。そして、そこには、必ず、答えがあるのです。
本当に、たくさんのことがあったので、ここに書いたことは、学びのごくわずか一部分です。これらの経験をさせていただきました、オーナーさんを始めとする、レストラン関係者様には、大変お世話になりました。この経験をとおして、自分に足りていないことや、今の日本のホスピタリティービジネスに足りていないこと、を発見することができました。これらを課題にすることにより、2年目のビジネススクールでの勉強のフォーカスが定まりました。そして、先週より、いよいよ2年目がスタートしました。今後も、思ったこと、感じたこと、学んだことをアップしていこうと思います。
最終日にみんなが作ってくれたロブスタースープのまかない 自腹で買ってきてくれた3500グラムの活きたロブスターが調理された 美味しさと感謝の気持ちで感動しました! |
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