そんなふうに、言葉全体の響きをコントロールする語句が存在すると思います。今回、紹介する語句は「ニューヨーク・スタイル」です。この語句を語頭につけると、「かっこいい」イメージが付随されるような気がするのです。たとえば、次の3つを比べてみます。
- レストラン vs ニューヨークスタイルのレストラン
- いす vs ニューヨークスタイルのいす
- シャツ vs ニューヨークスタイルのシャツ
人間には、衣食住という基本的ニーズがあります。ニューヨークで流行のモノ・サービスは、この基本的ニーズに、利便性・デザイン・コンテキスト(文脈)がくっつけられて売られています。これをヤラセと呼ぶこともできるでしょう。でも、これがニューヨーク流であり、一般的に、かっこよく見えて、実際に売れるのです。
今の世の中は、モノとサービスで溢れています。そこで、企業が向かっている方向が「差別化戦略」です。どうやって、モノとサービスにその企業なりの付加価値をつけるのか。実は、ここに日本人としての大チャンスがあるのではないかと思います。
衣食住の話に戻ると、最近の商品やサービスは、すでにその本質的機能にデザインや利便性がプラスされています。これらは、「Must Have」と呼ばれます。
例えば、レストランに行きます。そうしたら、食べることだけを期待しているお客さんはいません。そこで、どんな食器が使われているか、料理がすぐに出てくるか、そういったデザインや利便性はすでに、お客さんの期待の領域なのです。「清潔な食器を使っています」「料理を待たせません」これらは、今やお客さんにとって当然の期待(must have)となってしまい、残念ながら売り文句にはなりません。
そこで、次に注目されるのが、第3の付加価値。「コンテキスト(文脈)」です。ニューヨークは、すでにこのフェーズに入っていると思います。コンテキストは、場合によっては、デザインや利便性を損なわせる可能性もあります。でも、そこに一種の感動を秘めるのです。そして、世界にとって、「日本」は存在自体が、ユニークなコンテキストなのではないかと思うのです。そして、ニューヨークはこれに気付き始めています。
例えば、ニューヨークで初日に行った田舎家という居酒屋。六本木に本店があります。ここは、オープンキッチンの炉端焼きのお店です。メニューは、やや高めです。丸見えの厨房でネパール人の「親方」が声をふるって料理を出しています。しばらくすると、年の瀬にちなんで、スタッフによる餅つきが始まりました。これは、「食」に付随するデザインでも利便性の類でもありません。これが、コンテキストの付加価値です。閉店間際には、店員一同の三本締めがありました。外国のお客さんからすると、何だかわからずも、日本という文化を楽しめるのではないかと思います。
田舎家
http://www.inakayany.com/
「ニューヨークスタイル」の看板 |
店員さんによる餅つきのパフォーマンス この後、お客さんも参加 |
親方は、ネパール出身のウォンディ・ラマさん |
また、今回、指圧にも行ってきました。楽easeNYというお店です。ここは、日本人が経営しています。その時点で、お客さんは、「日本」というコンテキストを体験できるという付加価値を感じます。お客さんはアメリカ人ばかりでした。そして、店員は全員日本人。アロマの香る小さなテーマパークのような雰囲気でした。
楽easeNY
http://www.easeny.com/jp/
そして、一風堂ニューヨーク店もこの「日本」というアドバンテッジを生かしていました。食だけを輸出するのでなく、そこに付随する文化もいっしょに売る。日本語で掛け声をかける店員さんたち。内装もこだわっています。メニューは、ラーメン屋というより居酒屋。これがニューヨークで流行る日本のお店です。(テーブルは2時間待ち)ちなみに、ラーメンのお味は日本の一風堂と同じです。しかしながら、値段はちょっと高めです。私が食べたのは、白丸($14)に角煮($4)をトッピング。チップを含めて$22払いました。超高級ラーメンですね(笑)
一風堂
http://www.ippudony.com/
一風堂はやっぱりこの看板 ここだけ日本のよう |
白丸に角煮トッピング |
![]() |
掛け声は日本語 日本のラーメン屋文化を演出 |
私たち、日本人は、今、この「日本」というブランドを育て、世界に向けてマーケティングすることが求められていると思います。日本の衣食住は、本質的な価値としても素晴らしいです。日本の洋服はほつれないし、食事は美味しいし、ウォッシュレットのトイレは最高です。でも、それは、まだデザインと利便性の域を脱していません。コンテキストをしっかり構築して、世界の人がわかりやすい形に加工して「演出」する。これにより、もっと日本が世界で注目されるのではないかと思います。
この議論については、まだまだ自分の中でもやもやしています。しかし、日本人として、ここに何か大きなチャンスを感じているというのが本音です。あとの1年半の留学で、深めていこうと思います。
ちなみに、冒頭でふれた「ニューヨークスタイル」という言葉。これからは、「ジャパニーズスタイル」という語句が持つ意味合いの変化を、過去、現在、未来と追っていこうと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿