2011年9月23日金曜日

マーケティングの枠組み

2年目のプログラムが始まり、3週間がたちました。実践的な授業が進む中で、マーケティングの枠組みについてまとめておこうと思います。

世の中、商品やサービスが先に存在し、それをどうやって売るかと考えるのが一般的です。しかし、バブソン大学で教わるマーケティングでは、少し順番が違います。今回は、1年生のマーケティングの授業で、年間とおして使って来た「Bob Dolan's Model」を用いて、説明したいと思います。

このモデルでは、「世の中のチャンス」を見つけるところから入るのです。そして、チャンスを見つけたら、それをビジネスにするために、ターゲットとなる顧客を選定します。そして、その顧客にどのような価値提供をするのかをコンセプト化します。そして、ここで初めて、商品やサービスの内容を考えます。さらに、どこでどうやって売るのか、プロモーションをどうするのか、考えます。これらが決まったら、次に、価格を決めます。そして、最後に、どうやって新規顧客を得て、顧客を維持していくかを考えるのです。


では、この上の図を見ながら、もう少し、詳しく見ていきます。まずは、まずは、機会の創出ですが、これは、「5C」と呼ばれる、顧客(Customers)、会社(Company)、競合(Competitors)、協力者(Collaborators)、文脈(Context)の5つを見ることで、浮かび上がってきます。

そして、ターゲットとなる顧客の選定ですが、これは、STPというプロセスにのって行います。まずは、Segmentationです。市場を趣向によって、いくつかのグループに分けます。そして、その中のどのグループに売るのかを考えます(Target)。そして、そのグループに合わせて、ビジネスをPositioningします。

これが終わると、そのビジネスが顧客に提供する「価値」が見えてきます。これを、バブソンでは、「カスタマー・バリュー・プロポジション」(Customer Value Proposition)と呼んでいます。そこで、「〇〇という商品は、どういう顧客層に、どういうコンセプトで、どういう価値を提供します」という明言化がされます。

カスタマー・バリュー・プロポジションができたら、次は、商品やサービスの内容を決めます(Product)。ここが、重要なポイントだと思うのです。すなわち、売りたいものを売るのではなく。顧客に提供する価値に合わせてものを作って売るのです。そして、売る場所(Place)を決めます。物理的な場所に限らず、流通やそれにまつわるロジスティクスもここに含まれます。そして、宣伝方法(Promotion)を考えます。ここまできて、次に、価格を決めます(Price)。これらが、俗にいう、4Pです。

そして、最後に、どうやって、新規顧客を得て、顧客を維持していくかを考えます。

これが、マーケティングの一連の流れです。長いプロセスですが、大事なのは、売りたいものを売るのではなく、「顧客に提供する価値」に合わせてものを作って売ることなのです。この「顧客に提供する価値」をきちんと定めることがとても重要なのです。

2011年9月10日土曜日

モノ・サービスの良さを伝える力

8月31日から、バブソンMBAの2年目のプログラムが始まりました。2年目からは、ついに選択制の授業となります。また、夜だけのパートタイムの学生と同じ授業を受けるので、午後中心のクラス編制です。夜の6時半から9時までという遅いクラスがメインです。毎日朝8時から授業があった1年目と比べると、生活リズムを変える必要があります。

さて、2年目ですが、選択制ということもあり、何を中心に勉強していくかという柱のようなものが必要になります。私の場合は、マーケティングを中心に、ビジネスマンとしてのソフトスキル、数字感覚を磨いていこうと思っています。そこで、次の4つの授業をとりました。(短期集中のインテンシブ授業は別途。)

  • グローバル・マーケティング・ストラテジー:世界市場でのマーケティング戦略をを学びます。
  • ブランド・マネジメント:ブランドをどうやって作り、ビジネスに生かしていくかを学びます。
  • ネゴシエーション:アメリカ流のビジネス現場での交渉術を学びます。
  • アントレプレナー的ファイナンス:起業家および中小企業がどのように資金を調達するか学びます。

本題と関係ないですが、ハリケーン・アイリーンで倒された木


では、なぜ、私がマーケティングを中心に据えて勉強していこうと思ったか、なのですが、今の日本において、一番のびしろがあり、かつ、伸ばしていかなければならない分野だと思ったからです。日本は、質の高い商品とサービスにあふれ、それらが、効率の良いオペレーションで提供されている国だと思います。だから、今までは、そういったものを輸出することで、国際競争力を高めてきました。しかし、いつの間にか、他の国の、商品、サービス、オペレーションのレベルが日本に追いついてきました。となると、日本の優位性は相対的に低下せざるを得ません。そうなった今、こうして同質化し始めた商品、サービスを「どうやって売るのか」が今後の競争力の源泉になっていくのではないでしょうか?

インターンをしている時に、ボストンやニューヨークで活躍されている凄腕の職人さん方と一緒に働く機会がありました。その方々とお話をして、みなさんがおっしゃっていたのが、アメリカ人は能書きが好きだということです。例えば、同じミネラルウォーターでも、効能を得々と述べているものには、アメリカ人は飛びつくのだそうです。「この水は、夜に飲むとリラックス効果があります」と書かれた水と、何も書かれていない水、まったく同じ質の水でも、前者が売れるのです。そして、アメリカは、この言葉作りが驚くほどうまいです。

このように、どうやって、「モノ・サービスの良さをお客様に伝えるか」が、今の競争社会で生き残るキーになってきているのです。しかし、このテクニックは、日本では、文化的に許容されにくいのではないかと思うのです。だからこそ、マーケティングの発展が遅れてしまった気がするのです。

例えば、これらの言葉を見てみます。
  • 手前味噌ですが、、、(自分のつくったものをへりくだって)
  • つまらないものですが、、、(贈り物をへりくだって)
  • 能書きはいい。飲めばわかる。(能書きではなく、モノの本質がすべてだという含みを込めた日本酒のCM。中尾彬の名言)
どうも、日本では、「このモノはすごいんですよー」、とか、「このサービスはすごいんですよー」というのは、文化的に受け入れられにくいのではないかと思うのです。発信者の謙遜による自粛が主な原因です。そうすると、国際市場で、言葉巧みな外国企業に、負けてしまうのです。

とはいえ、確実に、能書きのトレンドは日本にも来ています。先日、和民のメニューを見ていて驚いたのです。

「頑固一徹!揚げたて厚揚 日本人の心にしみる味…自家製たまり醤油ソースで」

和民のウェブサイトに掲示されているメニューより

つまり、厚揚なのですが、こんなに長い説明がついているのです。これは、いわば、味の勝負から、言葉の選択の勝負になっているなと感じました。だいたい、どこの居酒屋チェーンに行っても、それなりに美味しいものが出てくる時代になりました。そうなると、味で差別化をするのが難しくなってきます。ということで、こういった言葉による付加価値を添えて、お客様が体験する価値を増幅させるというのがトレンドなのでしょう。

と長く論じつつも、能書きをたれるのが、マーケティングだとは思いません。あくまで、マーケティングの一つの手法です。違う言い方をすると、今、日本に必要なのは、モノ・サービスの良さを伝える力だと思います。そして、その力に大きな助けになるのがマーケティングだと思います。だから、マーケティングを勉強します。

次回は、マーケティングの骨組みについてまとめようと思っています。

2011年9月8日木曜日

インターンを終えて

8月26日で、3ヶ月間にわたる夏のインターンが終わりました。結果的に、1年目に勉強した内容を実践し、2年目に学ぶ内容の焦点を定めるのに、とてもいい経験をさせていただきました。ボストンのメインストリートでの日本食レストランのスタートアップということで、毎日が予期しないことの連続でした。最初の1ヶ月ほどは、開店準備のための清掃やペンキ塗りをひたすら行いました。スタートアップらしく、自分でやれることは自分でやるという姿勢を学びました。そして、7月に入ると、オープンを目前に控え、キッチンマネジメントの仕事にアサインしていただきました。効率的なオペレーションの確立と外国人コックのスーパーバイザー的な仕事を手伝わさせてもらいました。数えきれないほどの学びと驚きがあった3ヶ月間でした。その3ヶ月を通し、最初に立てた3つの目標は達成できたか考えてみたいと思います。

常識を打ち破れ

まず、第1の、「日本流のサービスとアメリカ型の経営の融合」についての学びですが、正直、経営に関しては、3ヶ月という短い期間でしたので、深く携わることはできませんでした。ただ、アメリカ人の嗜好に関する、沢山の発見をすることができました。そして、それは、私の常識を打ち砕く、毎日が驚きの連続でした。アメリカ人(一括りにしていますが、レストランがターゲットとしていたボストンのアメリカ人に限定)は、寿司というと、カリフォルニアロールに代表されるロールスシを指します。そして、魚の味を消してしまうくらい、醤油やスパイシーマヨネーズ、うなぎのたれをつけて食べます。いわば、ソースの味を楽しんでいます。これは、日本人の感覚からすると、「邪道」だし、なんだか、残念な気持ちになります。しかし、これが、彼らの食べ方であり、これで、美味しいと喜んでいただけるのであれば、それがここでのホスピタリティー(おもてなし)なのです。生魚の美味しさを伝えようとして、それを押し付けてしまうのは、自己満足に他なりません。だから、頭を柔らかく、心を広くもたなくてはなりません。

アメリカ人に人気のスパイシーマヨネーズがかかったロール寿司


これに、気づくのに、僕は時間がかかりました。しかし、時間をかけて、生魚の美味しさは伝えていくことも大事だと思っています。全員に受け入れられる必要はないのですが、きっと興味のあるお客様もいます。そういうチャンスを拾っていくのが文化の伝播であり、ビジネスにもなるのでしょう。また、この「邪道」から新しいチャンスが生まれることもあるのです。30年前、西海岸でカリフォルニアロールが作られたとき、それは邪道だったでしょう。しかし、今や、アメリカの市民権を得て、堂々とSushiの代表になっています。

Best of Boston 2011に輝いた某レストラン の寿司の上にはイチゴが。。。
この「邪道」もやがてスタンダードになるかもしれない

仕事に対する魂

第2の「現場での感覚を養う」という目的ですが、こちらは、かなり達成できたと思っています。一般的に、インターンというと、責任・権限のない傍観者的なポジションであることが多いです。しかし、小さなスタートアップビジネスであるが故、キッチンマネジメントという責任・権限を与えていただきました。冷や汗をかきながら、危機を乗り越えたり、時には、失敗をして会社にコストをかけてしまったこともありました。しかし、こういった経験が、私の仕事に対する魂を呼び覚ました。働くことは、楽しいことです。特に、私は、こうした人間と人間が日々ふれあう仕事が好きです。その気持ちを再確認できたことが大きな収穫だと思っています。

起業家精神の神髄

第3の「起業家精神にどっぷりと浸かる」ですが、オーナーさんの口癖でとても印象に残った言葉があります。私が、インターンを始めてすぐの頃、何かは忘れましたが、「これはできないかもしれないです」と言いました。そうすると、オーナーさんはこう返しました。「『できない』じゃなくて、『どうやったらできるか』を考えるのが経営者なんだよ」と。これを聞いたとき、僕の背中に戦慄が走りました。これこそ、起業家精神の神髄なのではないかと思いました。レストラン自体は、スタートアップですので、すべてが初めてで、わからないことばかりでした。だから、「どうやったらできるか」を考えなくては、前に進めないのです。そして、そこには、必ず、答えがあるのです。


本当に、たくさんのことがあったので、ここに書いたことは、学びのごくわずか一部分です。これらの経験をさせていただきました、オーナーさんを始めとする、レストラン関係者様には、大変お世話になりました。この経験をとおして、自分に足りていないことや、今の日本のホスピタリティービジネスに足りていないこと、を発見することができました。これらを課題にすることにより、2年目のビジネススクールでの勉強のフォーカスが定まりました。そして、先週より、いよいよ2年目がスタートしました。今後も、思ったこと、感じたこと、学んだことをアップしていこうと思います。

最終日にみんなが作ってくれたロブスタースープのまかない
自腹で買ってきてくれた3500グラムの活きたロブスターが調理された
美味しさと感謝の気持ちで感動しました!