2010年11月23日火曜日

美味しさは伝わるのか?

日本からアメリカに来ている人が口を揃えて言う言葉があります。それは、「アメリカの食事は美味しくない」です。これは、日本人に限らず、アジア・ヨーロッパ・南米、どこから来た人も、みな「アメリカの食事は美味しくない」と言います。たしかに、正直、美味しくないです。私のブログでは、今まで美味しかったもののみを紹介してきました。しかし、その陰にはいくつもの美味しくない料理がありました。そして、それは見た目ではわからなかったりするのです。

例えば、この学校のカフェテリアのピザ。こうやって見ると、おしゃれな感じに見えて、美味しいんじゃないかと淡い期待をしてしまいます。ところが、食べてみると、チーズの油でぎとぎとなのです。トマトソースもしつこい味で、2日連続で食べると口の中に口内炎ができます。これをコーラで流し込むように食べるのがアメリカ流です。恐ろしいです。

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とはいえ、そんなアメリカにも健康志向の波が押し寄せています。そこで人気を得ているのが、日本食です。ちょっとトレンディーな雑貨屋さんでは、こんなスタイリッシュな寿司グッズを売っていたりします。

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学校のカフェテリアにも寿司コーナーがあり、その場でにぎったり巻いてくれるサービスもあります。

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しかし、私たちの知っている日本食は、寿司だけではありません。そば、うどん、ラーメン、牛丼、親子丼、かつ丼、といったどんぶりもあれば、煮物、揚げ物、焼き物、数えきれないほどの日本食があります。そして、我々、日本人は、それらの料理がとても美味しいことを知っています。私は、常日頃、これらの美味しさをアメリカ人に伝えたい、と考えています。

どうしたら、美味しさが伝わるか。食べてもらえば、伝わるはずだ。

というわけで、先週、日本食を紹介するイベントを開催しました。名目は、手巻き寿司をみんなで作るCooking Classです。このプランで、学校側からも予算をいただくことができました。学校の掲示板にちらしを貼り、イントラネット上でも告知をしたおかげで、20名ほど集まりました。その半数以上が、アメリカ人で、あとはラテンアメリカ3名、中国人3名、インド人、アフリカ人1名ずつでした。そして、メニューは、手巻き寿司、大根と油揚げのお味噌汁、デザートにおしるこでした。

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これは、当日に配ったメニューです。

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私は、味噌汁とおしるこが大ヒットするのではないかという期待と自信をもっていました。実際、かなりいいできの味噌汁とおしるこで、2人ほど手伝いにきていただいた日本人には、美味しいと言ってもらえました。その反面、寿司にはあまり自信を持っていませんでした。

しかし、イベントが始まると、参加者たちは、予想以上に寿司を食べました。特に、サーモンとマグロとウナギが大人気でした。イクラも、みんな意外と食べていました。残念ながら、鯛はあまり手をつけてもらえませんでした。

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寿司が一回りした後、味噌汁をよそいました。ここで、参加者に異変が。。。みんな、「おなかいっぱいだから、少しでいいよ」と言うのです。そして、明らかに、食が進まないのです。おしるこも同様でした。もちろん、だれもおかわりをする人はいませんでした。

見事に期待を裏切られたことに、ショックを受けました。これが、壁かと。

すなわち、アメリカで市民権を得ている"Sushi"と「味噌汁」「おしるこ」には大きなへだたりがあったのです。このへだたりを、私は侮っていました。おいしいものは、説明しなくても、食べればわかってもらえる。そういう勘違いをしていたのです。

ここで、「美味しさ」ってなんだろうという問いかけに戻る必要性を感じました。

学部生の日本人の後輩にこの話をすると、彼は、ビールの話をしました。「ビールって初めて飲んだ時は、美味しくないじゃないですか。でも、ビールを飲むことと飲んでる時の楽しい思いでとかが絡み合って、だんだんに美味しく感じるようになるらしいです。」つまり、ビールを初めて飲む人に、ビールの美味しさを説明するのはきわめて困難なのです。かといって、飲めばわかると言って、飲んでもらっても、やはり初めから美味しいと感じる人は少ないでしょう。アメリカ人にとっての日本食も似たところがあるのかもしれないのです。

私たちは、幼少時からの味覚形成や思い出が合い混じって、味噌のこくや、小豆の甘さを美味しいと感じるようになったです。それを、一朝一夕でアメリカ人に理解してもらうのは、到底無理な話だったのです。

また、見た目、盛り付け、容器といった食事に付随する「デザイン」が、「食材」の乗数になることを理解しなくてはいけません。(料理=食材xデザイン)今回は、予算と時間の都合上、この乗数が限りなく1に近かったと思います。そして、食材としての美味しさ即ち味覚は、十人十色。しかし、見た目、盛り付け、容器に対する美の感覚は、味覚に比べて標準偏差が小さいと思うのです。万人受けする食材より、万人受けするデザインの方が多く存在するはずです。

せっかくなので、統計学の知識を使って、イメージ。
��平均50で、標準偏差を10(デザイン)と20(食材)で比べた見たチャート>

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Sushiは、本質的な「食材」だけでなく、この付随する「デザイン」もうまく機能して、市民権を勝ち得たのでしょう。

日本は、今、このデザインとしての魅力を見直されています。漢字が日本の「アート」としてアメリカでうけていたり、アニメも日本の芸術として認識されています。また、「禅」を取り込んだデザインがアメリカではスタイリッシュにうつったりしてます。こういった日本独自のデザインを、様々なビジネスアイディアに取り込んでいくことで、他の国がマネできなアドバンテッジを獲得できるのではないかと思います。


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