2010年9月22日水曜日

正義と正義のジレンマと登山

ESRのクラスより。「私たちは、between right and wrong(正義と悪)の判断で悩むだけではなく、between right and right (正義と正義)の判断で悩むこともあります。」

私のお気に入りの授業は二つあります。ESR(倫理)とLDO(リーダーシップ論)です。今日は、ESRについて書こうと思います。

ESRとはEthics and Social Responsibility Streamで、倫理と社会的責任(社会正義)というクラス名です。正直、最初の印象としては、今や当たり前となった企業の社会的責任(CSR)とかをやる授業かなあと思っていました。ところが、哲学者・思想家の理論を読みながら、いろいろな人間関係のケースを読むとても興味深い授業です。

日本語で読んでも難しい文献を英語で読んでいるので、もしかしたら、解釈に誤解があるかもしれません。でも、私の感じたことして記しておこうと思います。

授業では、上に書いた、between right and right の中でどちらを選択するのかという質問をされます。NHKでやっていたマイケル・サンデル先生を思い出します。

昨日の授業では、こんなことを聞かれました。

「あなたは、小さなコンサルティング会社の経営者です。従業員を雇おうと思い、何人も面接して、ようやく、サーラという女性を雇うことに決めました。サーラに、口頭で内定を約束しました。そして、来週の月曜日から働いてもらうことにしました。しかし、そのあと、あなたの友人から、いい人がいるから会わないかと言われました。会うだけならといって、キムという女性に会いました。そうすると、キムは大変すばらしい女性で、あなたがまさに探し求めていた人材でした。経験豊富で、顧客とのネットワークもあります。さて、この状況で、あなたは、どうしますか?」

このままサーラを雇うのか、それともサーラを断ってキムを雇うのか。どちらも、違法性はありません。一般的に言って、倫理的には、サーラを雇うべきでしょう。しかし、会社の将来を考えると、キムを雇うべきでしょう。

授業では、それまでに習ったアリストテレス、カント、ベンサムの理論を使って、この答えを考えました。授業では、倫理学の、3つの教えについて習いました。

1) Duty
個人は尊重されなければならない。個人は、それ自体に存在意義があり、人を手段とみなしてはいけない。この理論を用いると、人を手段として考えてはいけないので、サーラへの約束を尊重して、サーラを雇うことの方が理にかなっていることになります。

2) Consequence
ベンサムに代表される「最大多数の最大幸福」です。個人の幸福の総計が社会全体の幸福であり、それを最大化すべきであるという考え方です。これを使うと、キムを雇って、会社を成功させて、顧客に、より高い価値のサービスを提供することで、幸福を最大化することができるという理屈も考えられます。

3) Character
アリストテレスの、「道徳的な徳は習慣から得られる」という考え方です。毎日毎日良いことをしていると、それが習慣になり、それが私たちの性格になるという意味です。即時の判断が求められる時、普段から良いことをしている人は、即時に良い判断ができるのです。(ここでいう「良い」とは、rightの訳です。)さらに、この良い性格は、世間でも良いという評判を受けることになり、社会と良好な関係を築けます。継続の大事さを感じます。

どの理論も、なんだか、立派なことを言っていて、まさに道徳を習っている感じです。こういった道徳をもとに行動すれば、たとえ、サーラを雇おうと、キムを雇おうと、倫理的な裏付けができ、心理的な安心感に浸ることができるのかもしれません。

ここまでが序盤で、次に出てくるのが、マキャベリです。マキャベリの「君主論」という名前だけは、世界史で習ったので、聞き覚えがありましたが、内容は知りませんでした。そして、それは、かなり興味深いものでした。

「君主は、領域を守るため、人が尊重されるという決まりを守ることはできないし、信条や友人関係、人間性、宗教に反した行いをせざるを得ない。」

「しかし、君主は慈悲深く、信条に厚く、人間性があり、高貴で、信仰に厚いように、見せかけなければならない」

人は、良い人ばかりではありません。悪い人もたくさんいます。その人たちの上に立つものは、それだけたくさんの人を治めて行くうえで、悪いことをせざるをえないのです。しかし、見た目は良い人でなくてはならないのです。

先に述べた、カント、ベンサム、アリストテレスの考え方が打ち砕かれる感じがしました。

ということで、これらの考えを知ったうえで、私たちは、正義と正義のジレンマの中で、様々な決断をしていかなくてはいけないのです。

さて、文字ばかりで退屈な投稿になってしまったので、先週末に行ったニューハンプシャーのWelch-Dickey-Loopの登山の写真です。ボストンから車で2時間の山です。本格的登山6時間のコースです。2年生が企画してくれました。

こんな岩の間を抜けながら登ります。

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ファンガス?苔に似てます。ふわふわしてます。岩のいたるところに生えていました。

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崖に向かって歩く私。

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あと1か月もすると、この岩の表面は氷で覆われるそうです。去年は、氷の山の登山をしたらしい。。恐ろしいです。

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夜は、ローカルなアメリカンレストランに行きました。
まずは、みんなで、チキンとチーズフライをシェア。この真ん中のグラタンみたいなのが意外と美味しかったです。

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食べたのは、チキンキエフ。どうやら、ロシア料理みたいです。フライの中身は、チキンです。

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そのチキンの中から、ガーリックとバターとハーブがじゅわっと出てきます。コンセプトは、とても美味しい料理なので、これを日本風にアレンジしたら、絶対に美味しい料理になると思いました。

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さて、本日木曜日なので、あと一日。毎日かなりヘビーな生活です。現在夜中の1時。これから、法律の本を40ページ読みます。今更ながら、大学受験時代に本で見た、パラグラフ・リーディングの速読法を試しています。

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