2011年3月6日日曜日

メープルの滴

最終生産物しか見えないこの消費社会で、モノの生産工程を見る機会はとても貴重です。ということで、メープルシロップの生産工程を見に、ボストン西南、Uxbridgeという町のBlackstone Valleyというところに、行ってきました。
http://www.blackstonevalleysugaring.org/

ボランティア中心に運営しているメープル・シロップ生産のビジターセンターです。地元の農家の方々が、兼業でメープルシロップを作られています。


ニューイングランドの雰囲気が漂うビジターセンター

始めに、メープルシロップのレクチャーをしていただきました。なんと、メープルの木から、シロップのもととなる樹液がとれるのは、この3月の初めの20日間だけだそうです。とても短い期間です。


ボランティアスタッフの方によるレクチャー

メカニズムとしては、夜、氷点下の寒い中、樹木中の水分が凝縮されて圧縮されます。それが、日中気温が上がって暖かくなると、膨張します。そこで、樹木に小さな穴をあけると、樹液が外にこぼれてくるのです。つまり、この「寒暖差」という気候条件がそろわないと、メープルの樹液はとれません。現在、生産が可能な国は、3か国だけだそうです。カナダ、アメリカ、そして、なんと、日本!Wikipediaによると、埼玉県秩父市で作っているそうです。)

レクチャーの後は、いよいよ外へ。実際に樹液採取です。樹木に小さな穴を掘ると、すぐにポタポタと樹液がこぼれてきます。それをバケツでキャッチ。指先に垂らしてなめてみました。無色透明、粘りなし。ほんのり甘い水といったところです。


以前、あけた穴には白いマークがついている
それを見ながら、どこに穴をあけるか狙いを定める



指に垂れ落ちるメープルの雫


雪が溶けて湿った地面から、水分と養分を吸収

昔、ネイティブアメリカン(アメリカン・インディアン)が、どうやってメープルシロップを作っていたかのデモンストレーションを見ました。採取した樹液に、焼石を放り込む。そうすると、一気に蒸発します。この時の湯気の香り、お祭りの綿菓子にそっくりです。


ネイティブアメリカンの工程を模倣

防水のこの器は、カヌーを作るときの樹皮から作られている

焼石を放り込み、沸き立つ甘い湯気

これは、現代版のメープルシロップを生産するマシーン。ものすごい湯気が立ち込めます。


すごい勢いで立ち込める湯気

最後は、サンプルをいただいて、お土産コーナー。メープル・テリヤキ・ソースという不思議な商品もありました(笑)


ツアーの最後はやはりサンプルの試食

メープル・テリヤキ・ソース。。。

さて、こういった一連のメープルシロップのプロモーションは、マーケティングでは、「シェア・オブ・マインド」(心の占有率)の向上の一環と考えられます。商品の認知から購買までの行動は、一般的に、AIDAと呼ばれる4つのステージに分けられます。「Awareness:認知」⇒「Interest:興味」⇒「Desire:欲求」⇒「Action:購買」。この最初の2ステージにおいて、どうやってより多くの消費者の認知を得て、興味を促すか。そして、いかにして、消費者の頭の中に「メープルシロップ」を占有させるか。それが、最終的な購買行動につながっていくのです。また、ソーシャルメディアも意識して、Facebookのサイトもちゃんと作っています。http://www.facebook.com/blackstonevalleysugaring ITリテラシーが農家まで浸透しているのは、アメリカのすごいところだと思います。

というMBA的な理屈は抜きにして、農家の方々は、楽しそうにボランティアで(無給で)活動をしていました。純粋に、自分たちの育てているものをみんなに知ってもらいたいというピュアな気持ちが感じられました。いいものを作ったら、それをみんなに食べてもらいたいと思う。これが、モチベーションの源泉になってるビジネスは、消費者に幸せをもたらすと思います。

ボランティアの子供たちが作ったスノーマン

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